ブティックファームとは、特定の領域やテーマに絞って活動する、少人数のコンサルファームのことです。大手ファームの出身者が独立して立ち上げた会社が多く、戦略、M&A、事業再生、特定の業界など、得意分野がはっきりしています。

「大手ではなくブティックファームに行くのはどうですか」という相談を受けることがあります。私たちは、合う人には積極的に勧めています。早くから任される、経営者との距離が近い、やりたい領域の経験を早く積めるという、大手にはない良さがあるからです。ただし、ファームによって環境の差が大きいので、選び方が大事になります。

この記事では、ブティックファームの良い点と注意点、そして良いファームの見分け方を説明します。

ブティックファームのメリット(良い点)

1. 早い段階から案件の全体を任される

ブティックファームは少数精鋭なので、若手のうちから任される範囲が広いです。大手では上司が組み立てた論点の一部を担当する年次でも、案件の全体を見渡し、提案活動にも関わる機会があります。

意図的に規模を大きくせず、マネージャー1人が見るメンバーの数を絞って、育成の質を保っているファームもあります。一人ひとりに手をかけて育ててもらえるのは、貴重な環境です。

2. 経営者との距離が近い

ブティックファームのクライアントは、大手のクライアントより一段小さい規模の企業であることが多いです。その分、経営者との距離が近く、自分の提言が経営に直接反映される実感を得やすいです。

3. やりたい領域の経験を早く積める

特定の業界やテーマに強いファームであれば、大手では必ずしも経験できない案件に、早くから関われます。将来その業界でキャリアを築きたいなど、やりたいことが明確な人にとっては、合理的な選択です。

面接で「あなたは何をやりたいのか」を強く問うファームもあります。コンサルとしての技術や経験だけでなく、何を実現したいかという意志を見ているのです。やりたいことが明確にあって、少人数で密度高く鍛えられたい人に向いています。

4. 経験者は、働き方と収入の両方を取りやすい

すでにコンサルの経験がある人にとっては、働き方の面でも良さがあります。大手で基礎と仕事の基準を身につけた人がブティックファームに移ると、高い給与水準を保ちながら、働く時間を抑えて成果を出していくことができます。先に力をつけているからこそ、できる働き方です。

ブティックファームのデメリット(注意点)

1. 全社レベルの大きな案件は少ない

規模の小さいファームでは、大企業の全社戦略や全社の変革といった案件は少なく、事業単位の案件が中心になります。全社レベルの経営課題に取り組みたいのであれば、大手のほうが機会は多いです。

2. 誰と働くかで、成長の速さが変わる

ブティックファームは、代表と少数のパートナー、マネージャーで構成されていることが多いです。研修のような仕組みは、大手のほうが整っています。その代わり、経験のある人の近くで直接教わることができます。そのため、誰と働くかによって、成長の速さが大きく変わります。

ファームによっては、案件の獲得を代表が中心になって担っているところもあります。そうした環境では、自分から学び取りに行く姿勢がある人ほど伸びます。

3. 評価がすぐに全員に伝わる

100人、200人という規模の組織では、誰が何をやっているかが全員に見えます。良い仕事をすればすぐに評価されます。逆に、成果が出ていなければ、それもすぐに伝わります。大きな組織の中で目立たずにやり過ごす、ということはできません。

4. 給与と知名度は、ファームごとに確かめる

給与については確認が必要です。ファームによっては、外資系の大手より一段低い水準のところがあります。その代わりに得られる経験の濃さと、どちらを重視するかの判断になります。

知名度も同じです。業界の中では高く評価されているファームでも、事業会社の人事の担当者には社名が伝わらないことがあります。将来、事業会社への転職を考えている人は、そのファームの出身者がどこに移っているかを確かめておくと安心です。

良いブティックファームを見分ける2つの問い

ブティックファームを検討するときは、会社の規模や提示された年収だけでなく、次の2点を確認してください。

  1. 誰から直接学べるのか。 「この人から学びたい」と思える人がいるかどうかです。会社で選ぶというより、人とチームで選びます。その領域で実績のある人の近くで、直接指導を受けながら案件を経験できるなら、大手に入るより成長できる可能性があります。
  2. そのファームでしか得にくい専門性があるか。 特定の業界やテーマに強みがあり、自分のやりたい領域と重なっているかどうかです。

このどちらかが魅力的なら、ブティックファームは十分に良い選択肢です。どちらもまだはっきりしない場合は、大手のほうが安定感があります。

専門の領域が外から分かりにくいファームの場合は、どんな案件が多いのか、誰から学べるのかを、特に丁寧に確かめてください。

未経験からブティックファームに入る場合に知っておきたいこと

コンサルが未経験の人にとっては、大手のほうが、教育の仕組みや知名度の面で安定感があります。名前の通った大手で昇進した経歴は、その後の転職や独立でも長く評価されます。

一方で、未経験からブティックファームに入って活躍している人もいます。先ほどの2つの問いに、はっきり答えが出るファームであれば、未経験でも良い選択肢になります。少人数で、実績のある人から直接鍛えられる環境は、大手では得にくいものです。

すでにコンサルの経験がある人には、特に合います。大手で基礎を固め、案件を回せるようになってから移れば、ブティックファームの裁量の大きさを生かせます。

なお、クライアントの中に入って実行まで担うタイプのファームでの経験は、PEファンドへの転職で評価されます。投資先の経営改善を担う人材を求めるファンドが増えているからです。将来そうした道を考えている人には、良い経験になります。