コンサルファームを比べていると、「ワンプール制」と「分業制」という言葉が出てきます。どちらのファームを選ぶかで、入社後に関わる案件の決まり方が変わります。
ワンプール制は、コンサルタントを業界や機能で分けず、全員を一つの集団として扱い、案件ごとに人を割り当てる仕組みです。分業制は、金融、製造といった業界別や、人事、ITといった機能別の部門に所属し、基本的にその部門の案件に入る仕組みです。
先に結論を言うと、どちらが良いかは人によります。幅広く経験しながら専門を探したい人や、今の業界から離れたい人には、ワンプール制が合います。前職の経験をそのまま生かして早く成果を出したい人には、分業制が合います。私たちのうち1人は総合ファームの出身で、仕事を通じてさまざまなファームの人と関わってきました。そこで見聞きしたことをもとに説明します。
ワンプール制のメリット:幅広い業界・テーマを経験できる
ワンプール制では、さまざまな業界やテーマの案件に入る機会があります。自分が何に興味を持てるのか、何が得意なのかは、経験してみないと分かりません。やりたいことがまだはっきりしていない人にとっては、広く経験しながら専門を探せることが大きな利点です。
コンサルの世界には、自分のやりたいことではない業界やテーマで囲い込まれて、そのまま続けている人が結構います。最初から一つの部門に固定されないことは、その意味でも安心材料になります。
前職とはまったく違う業界やテーマに挑戦しやすいのも、ワンプール制の良さです。
ワンプール制のデメリット:専門を自分で決める必要がある
ワンプール制でも、ずっと幅広くやり続けるわけではありません。さまざまなファームの出身者から聞く限り、ワンプール制でも、だんだん専門は分かれていきます。何も考えずにいると、最初にたまたま関わった業界や分野に、流れで特化していくことになります。
ですから、ワンプール制のファームでは、入りたい案件の希望を自分から伝え、どの分野で専門を作るかを自分で決めていく意識が大事です。その意識がある人にとっては、選べる幅が広いことがそのまま強みになります。
もう一つ、幅広くやることには注意点があります。いろいろな領域に少しずつ関わっただけだと、何ができる人なのかが外から分かりにくくなり、転職市場で評価されにくくなります。最初に幅広く経験したうえで、絞っていくことを考えてください。
分業制のメリット:入社前に仕事内容が読める
分業制では、どの部門に入るかで、関わる業界やテーマがおおよそ決まります。入社前に仕事の中身を確かめられるので、想像と違う分野に入る心配が小さいです。
中途の場合は、前職の経験を考慮して配属が決まります。自分がいた業界を担当する部門か、自分が扱ってきた業務や仕組みを専門にする部門に入れば、最初から土地勘のある仕事ができます。
分業制のデメリット:部門の異動が簡単ではない
分業制では、興味のない分野の部門に入ると、その分野で経験を積み続けることになります。次に転職するときも、その分野の経験で評価されます。
入社後に部門を移ることは、できなくはありませんが簡単ではありません。この業界では、実力がなければ希望の分野に移れず、実力があっても今の部門に囲い込まれて結局移れない、ということがよく起きます。そのため、希望の分野に移るために他のファームへ転職する人は珍しくありません。それは正当な手段ですし、優秀な人がそうした動機で移っていく例を、私たちはたくさん見てきました。
入社後に分野を変えたくなったときに知っておきたいこと
どちらの制度でも、途中で分野を変えたくなることはあります。そのときのために、4つのことを知っておいてください。
- 大きく分野を変えるなら、社内の異動でも転職でも、積み上げた人間関係は一度なくなります。 その点では、どちらを選んでも大きな差はありません。
- 「業界を変えたい」だけでは、理由として弱いです。 業界をまたいで使える領域の経験があると、移りやすくなります。特定の業務やシステム、手法の経験です。
- 年齢が上がるほど、未経験の分野には移りにくくなります。 変えると決めたなら、早く動くほうがよいです。
- 希望は、最初から強く言いすぎないほうがよいです。 まず今の場所で成果を出し、それでも移りたいと思ったときに、はっきり主張するほうが通りやすいです。
転職して分野を変えても、そのときの案件の状況によっては、望む案件に入れないこともあります。たまたま入った先で評価され、そのまま続けて、パートナーになった人もいます。その人は「面白さは自分で掘り起こすものだ」と話していました。そういうキャリアも、十分にあり得ます。
中途入社で大事なのは、最初の案件に土地勘があること
中途で入った人が立ち上がりで一番安全なのは、自分がいた業界をやるか、自分がやってきた仕事の延長をやるか、のどちらかです。
非常に優秀な一部の人を除けば、土地勘のある案件に入るかどうかで、発揮できる力は少なくとも2倍は変わります。なじみのない分野に最初に入ると、会議で話されている言葉からして分からず、成果を出すまでに時間がかかります。中途入社の人は、新卒と違って、早い段階から成果を期待されます。
分業制のファームでは、部門を選ぶ時点で、この土地勘を確保しやすいです。ワンプール制のファームでも、最初の案件を決める面談で前職の経験と得意分野をはっきり伝えれば、経験に近い案件から始めることができます。制度がどちらであっても、最初の案件の選び方が大事だということです。
ワンプール制が向いている人、分業制が向いている人
次のような人には、ワンプール制が向いています。
- 今の仕事や業界から離れて、違うことをやりたい人。
- やりたい分野がまだ決まっておらず、いくつか経験してから決めたい人。
- 自分で希望を伝え、専門を自分で作っていける人。
次のような人には、分業制が向いています。
- 前職の業界や業務の経験を、そのまま生かしたい人。
- やりたい分野が、すでにはっきりしている人。
- 入社前に、どんな仕事をするのかを確かめておきたい人。
ワンプール制か分業制かより先に確かめたいこと
制度の違いよりも大事なのは、そのファームで実際にどんな案件が多く、自分がどんな案件に入れそうかです。同じ制度でも、ファームや部門によって、希望がどこまで通るかは違います。
未経験でコンサルに入る場合は、教育の仕組みが自分に合うかどうかも確かめてください。規模のあるファームは、研修や育成の仕組みが整っていて安定感があります。少人数のファームは、経験のある人の近くで直接教わることができます。どちらが合うかは、人によって違います。