「コンサルは激務だと聞きますが、それでも転職する価値はありますか」。初回面談で、最もよく受ける質問の一つです。
私たちの答えは「あります」です。コンサルは20代から30代前半のキャリアにおいて、最もコスパの高い選択肢の一つだと考えています。私たち2人は、BCGとアクセンチュアの出身です。どちらも事業会社から中途でコンサルに入り、きつい時期も経験しましたが、それでもコンサルを経験してよかったと心から思っています。
ただ、私たちは転職エージェントなので、コンサルへの転職を勧める立場にあります。良い面だけを並べても信用していただけないと思うので、この記事では、メリットを5つ挙げたうえで、その代わりに何が大変なのかも書きます。
コンサルに転職する5つのメリット
メリット1:仕事の基準値が上がり、一生戻らない
一番大きいのは、仕事の基準値が圧倒的に上がることです。コンサルに入ると、資料の作り方、会議での発言の仕方、論点の整理の仕方、すべてにおいて求められる水準が高いです。
最初は何をやっても厳しく指摘されます。しかし半年も経つと、資料1枚、発言一つに自分が求める水準が、一段上がっていることに気づきます。この基準値の引き上げは、一度身につくと一生戻りません。コンサルを辞めた後にどんな仕事をしても、この基準が自分を支えてくれます。これは目に見えない巨大な資産になります。
成長の速さも、ここから来ています。毎日のようにマネージャーからレビューを受けて修正するので、改善のサイクルがとても速いのです。事業会社には、事業会社でしか積めない経験があります。一方で、短い期間に何度も直される経験の密度は、コンサルならではのものです。
メリット2:短期間で複数の業界と企業を内側から見られる
事業会社にいると、深く知ることができるのは自分の会社1社です。コンサルは半年ごとにプロジェクトが変わるので、3年いれば5〜6社程度の経営課題に深く関わることになります。
製造業の原価構造、小売業の出店戦略、金融機関のリスク管理。こういった知識が業界横断で蓄積されていくのは、コンサルでしか得られない経験です。
周りにいる人の影響も大きいです。人間は環境に適応する生き物なので、優秀な人に囲まれると、仕事への取り組み方、勉強の仕方、キャリアの考え方まで、自分も自然と引き上げられます。
メリット3:中途入社でも年収1,000万円が視野に入る
給与面も、正直に言って大きなメリットです。
戦略ファームの場合、社会人経験が4〜10年の人が中途で入ると、年収900万〜1,000万円からのスタートが目安になります。総合ファームでも、昇進すれば届きます。私たちのうち1人は、27歳のときに年収600万円弱で、未経験から総合ファームに入りました。2年後の年収は1,200万円ぐらいでした。ただし、これはビジネスコンサルタントの例で、職種によっては同じようには上がりません。
20代や30代前半でこの水準を得られる業界は、コンサルのほかには外資系の投資銀行や総合商社ぐらいです。しかもコンサルは中途採用が活発なので、新卒のときにこうした業界に入れなかった人にもチャンスがあります。
一つ注意があります。コンサルの給与は、前職の年収ではなく入社時の職位で決まります。前職の年収が高かった人は、転職の直後に年収が下がることもあります。
メリット4:キャリアの選択肢が広がる
コンサル出身者には、大手事業会社の経営企画、スタートアップの経営幹部、PEファンド、起業と、ほぼ全方位にキャリアパスがあります。コンサルでの経験が、どの業界でも使えるスキルとして転職市場で認知されているからです。
もう一つ、あまり語られないメリットがあります。自分の限界を知れることです。コンサルの仕事は、常に自分のキャパシティの限界で戦うことになります。その繰り返しの中で、自分がどこまでやれるのか、何が得意で何が苦手なのかが嫌でも見えてきます。これは、自分のキャリアを設計するうえで最も重要な情報です。
メリット5:実力で評価される環境で働ける
コンサルには裁量があり、実力で差がつきます。お客さんが喜んでいればそれでよい、という割り切ったカルチャーで、会社の色に染まることも求められません。
年次よりも成果で評価されたい人、自分の裁量で仕事を進めたい人にとっては、この環境そのものが大きなメリットです。
私たちのうち1人は、総合商社などを経てコンサルに移りました。総合商社は、大きな事業を自分の手で作りたい人や、海外で働きたい人には、とても良い職場です。ただ、その1人にはコンサルの働き方のほうが合っていて、キャリアで最良の選択だったと振り返っています。良い悪いではなく、合うかどうかの問題です。前の職場では力を出し切れなかった人が、コンサルに来て水を得た魚のように活躍する例を、私たちは何人も見てきました。
コンサル・投資銀行・総合商社の違いと選び方
年収の水準が近いので、外資系の投資銀行や総合商社と比べて迷う方もいます。どれも一長一短で、優劣はありません。それぞれの面白さは次のとおりです。
- コンサル。 事業を俯瞰して理解できることです。なぜこの事業は儲かり、あの事業は儲からないのかを、客観的な立場で考え抜きます。事業の良し悪しを見抜く目が養われるので、将来、起業したい人や経営に関わりたい人に向いています。
- 外資系の投資銀行。 M&Aや資金調達の案件を自分で作り、動かすことです。数千億円規模の案件に、20代で関われます。ファイナンスの専門性を武器にしたい人に向いています。専門性が高い分、進む方向は早めに絞られます。
- 総合商社。 川上から川下までを自分でつなぎ、事業を自分の手で作ることです。海外で事業を一から立ち上げるような経験は、商社でしかできません。30代以降に任される仕事の規模は、3つの中で頭一つ抜けています。人として面白い人が多いのも特徴です。
選ぶ基準は、自分が何に一番わくわくするかです。どれを選んでも、20代のキャリアとしては最上位の経験が積めます。
やりたいことがまだ決まっていない場合は、選択肢が最も広がるものを選ぶのが合理的です。その点では、幅広い業界を短期間で経験できるコンサルが、最も汎用性が高いと私たちは考えています。
コンサル転職のデメリット:メリットは大変さと引き換え
ここまで書いたメリットはすべて本当です。ただし、どれも大変さと表裏一体です。
- 基準値が上がるのは、毎日厳しく指摘されるからです。
- 短期間で複数の業界を見られるのは、半年ごとにゼロから学び直すからです。
- 給与が高いのは、労働時間が長いからです。
- 実力で評価されるということは、成果が出なければ評価が下がるということです。
楽に手に入るメリットは一つもありません。それでも、数年間をこの大変さに使う覚悟があるなら、得られるものは確実に大きいです。私たちが激務を知ったうえでコンサルを勧めるのは、このためです。逆に、その覚悟が持てない方には、コンサルへの転職を勧めません。
激務で引き換えにするのは、時間・健康・人間関係
引き換えにするものを、もう少し具体的に書きます。主に3つあります。
- 時間。 体力のある数年間をコンサルに使うということは、その時間を他のことに使えないということです。友人と遊ぶ時間、趣味に没頭する時間、家族や恋人とゆっくり過ごす時間が、大きく削られます。
- 心身の健康。 忙しい生活が続くことの身体への負荷に加えて、常に高い水準を求められることによる精神的な消耗もあります。体調を崩して離れる人は、珍しくありません。
- 人間関係。 仕事が忙しく、コンサル以外の友人と疎遠になりやすいです。案件が変わるたびにチームも変わるので、職場で深い関係を築きにくい面もあります。
それでも勧める理由は、取り戻せるものと、残るものの違いにあります。時間は戻ってきません。しかし、健康は回復できますし、人間関係は後から作り直せます。一方で、コンサルで得られる仕事の基準値、業界をまたいだ知見、キャリアの選択肢の広がりは、一度身につけば一生消えません。全体で見れば得るもののほうが大きい、というのが私たちの結論です。
今の会社に不満がなくても、コンサル転職を考える価値がある人
今の勤務先が恵まれているなら、無理に移る必要はありません。それでも検討する価値があるのは、次の3つのどれかに当てはまる場合です。
- 40歳までに年収2,000万円以上が欲しい。 総合コンサルのシニアマネージャー、戦略コンサルのマネージャークラスであれば十分届く水準で、転職から5〜8年ぐらいで到達可能です。
- もっと早い時期に、大きな役割を担いたい。 日系の大手企業では、部長や役員になるのは50歳前後が一般的です。じっくり経験を積める良さがある一方で、早く任されたい人にはコンサルが合います。
- 将来独立したい。 一度コンサルを経験すれば、フリーのコンサルタントとして稼ぎながら起業の準備ができます。生活基盤を維持したまま事業を立ち上げられるのは、大きなメリットです。