総合コンサルへの転職を考えている方から、「総合コンサルは高級派遣だと聞きました」「AIでなくなる仕事ではないですか」と聞かれることが増えました。SNSでそういう意見を目にして、不安になる方が多いようです。
私たちのうち1人は、総合ファームで管理職として、案件の獲得と運営の両方を担ってきました。その経験から言うと、どちらの見方も一部は当たっていますが、実態とは違う部分が多いです。この記事では、総合コンサルが実際に何をしているのか、なぜ「高級派遣」と言われるのか、AIで仕事がどう変わるのかを説明します。
総合コンサルの仕事内容:数年に一度の改革を支援する
総合コンサルが扱うのは、新規事業の事業性の検証、基幹システムの要件定義、業務改革、中期経営計画の策定といった仕事です。どれも目的が明確で、専門の知見が必要で、チームで取り組みます。共通しているのは、毎日の定常業務ではなく、期限のある臨時のプロジェクトだということです。
コンサルはアドバイザーなので、事業を行う会社から見れば補助的な立場です。これは総合でも戦略でも変わりません。ものを決めるのも、実行するのも、お客さんです。ただし、補助的であることと、価値が低いことは別の話です。
企業が総合コンサルに依頼する理由
企業がこうした仕事を外に出すのは、価値が低い雑用だからではありません。数年に一度しかやらない改革の要員を常に社内に抱えるより、必要なときに外から調達するほうが、費用の面でも知見の新しさの面でも合理的だからです。
日本企業には、専門人材を自社で雇いにくい事情もあります。一度雇うと簡単には辞めてもらえず、専門人材に見合う報酬を出すのも、報酬の仕組みが硬いために難しいのです。コンサルを使えば、人件費を必要な期間だけの費用にできます。
もう一つの役割があります。社内では正解だと分かっていても、しがらみがあって動かせない。そういうときに、第三者を入れて物事を動かします。コンサルが必要とされる理由の一部は、ここにあります。
総合コンサルが「高級派遣」と言われる理由
客先に常駐して、手足のような仕事をしている人は確かにいます。ただ、それは主に2つの場合です。
1つは、本人の力が足りず、その程度の仕事しか任せられない場合です。もう1つは、経験のない若手を、範囲があいまいなまま1人で客先に送り込んで放置する場合です。本人は「何でもやります」と言うしかなくなります。
実態が「手を貸しているだけ」であれば、それは高級派遣と言われても仕方がありません。しかし、まともなプロジェクトで求められているのは、知見と、物事と人を動かす力です。入社後にどちらの側に立つかは、ファームと案件の選び方、そして本人の力で決まります。
総合コンサルで専門性は身につくのか
「外部の立場では専門性が身につかないのでは」という不安もよく聞きます。
専門性には3種類あります。特定の産業に詳しいこと、サプライチェーンや人事制度のような特定の領域に詳しいこと、要件定義ができるといった特定の仕事を遂行できることです。後の2つは、テーマによっては、コンサルのほうが身につきやすいこともあります。一つの会社では何年かに一度しか出会わない改革のテーマに、コンサルは複数のクライアントを通じて繰り返し関われるからです。同じテーマを繰り返し経験できる分、詳しくなりやすいのです。
一方で、事業会社には、当事者として最後までやり切る深い経験があります。これは外部の立場では得にくいものです。どちらが身につきやすいかは、テーマと関わり方によります。
ただ、何かの分野で圧倒的に詳しくなる必要はありません。現実に必要なのは、「この中では相対的にこれに詳しい人」という程度の立ち位置で、要は掛け合わせです。総合コンサルであれば、ITから逃げないことが、その掛け合わせの一つを作るうえで大事です。
総合コンサルの仕事はAIでなくなるのか
調査や資料作成は、AIでかなり省力化されていきます。すでに変わってきています。ただ、お客さんは資料にお金を払っているのではなく、物事を動かすことにお金を払っています。現場に行って情報を取り、人を説得し、施策を定着させる。コンサルの価値はそこにあり、AIで簡単に置き換えられるものではないと、私たちは考えています。
企業が「AIがあるからコンサルは要らない」と判断するまでには、まだ時間がかかると見ています。理由は3つあります。
- 企業の側が、まだAIを十分に使いこなせていません。
- 改革のテーマで最も重要な情報は、ネットには出ていません。「他社ではどうやっているのか」という問いに、AIは一般論しか返せません。
- 取引は、人と人との関係で決まります。何か起きたときに責任を取れるのも、人と会社だけです。
変化が先に起きるとすれば、コンサルファームの側です。利益を保つために、AIを使って少ない人数で仕事を回すようになる可能性があります。日本では、解雇ではなく、辞めた人の補充を減らす形で進むのではないかと見ています。
ただし、AIの進歩は速く、この先を正確に見通すことは誰にもできません。5年先、10年先のことは、正直なところ分かりません。それはコンサルに限らず、事務系の仕事全体に言えることです。少なくとも、今コンサルに入って数年のうちに仕事がなくなる可能性は低いと、私たちは見ています。