「総合ファームにいますが、戦略ファームに移ることはできますか」という相談は、私たちが受ける相談の中でも特に多いものです。
結論から言うと、できます。大手の総合ファームは、戦略ファームが中途で採用する人の出身元として最大です。総合ファームから戦略ファームに移ってくる人は、普通にいます。
ただし、移れるかどうかを決めるのは、どの総合ファームにいたかよりも、学歴、そこでの経験、そしてケース面接の出来です。この記事では、何が評価され、いつ動くべきかを説明します。
総合から戦略への転職で見られるのは、学歴とケース面接
大手の総合ファームにいるのであれば、職歴としては十分に土俵に立てています。戦略部門でなくても構いません。戦略以外の部門から戦略ファームに移る人も、普通にいます。
ハードルになるのは、次の2つです。
1つは学歴です。戦略ファームには、早慶、旧帝大、海外大の出身者が多いのは事実です。ただし、中途採用は新卒とは基準が違います。学歴だけでなく、学歴と職歴を合わせて判断されます。学歴にやや不安があっても、大手の総合ファームで経験を積んでいれば、書類が通る可能性はあります。
もう1つは、ケース面接です。書類が通れば、そこから先は基本的にケース面接の出来で決まります。1か月ほどの準備で、紙で問題を解いただけで受けに行く人がかなりいますが、そうした人の多くは落ちます。面接官の経験がある人を相手に、実際に声に出して話す練習まで行う必要があります。
戦略ファームに評価される経験、されにくい経験
戦略ファームの面接官は、どの業界やテーマを担当していたかを、それほど気にしていません。特に若手であればそうです。見ているのは、自分の頭で考えた経験があるかどうかです。
そのうえで、評価されやすい経験と、されにくい経験があります。
- 評価されやすい経験:戦略部門での案件、経営企画の支援、デューデリジェンス、新規事業の立ち上げなど、経営層が直接の相手になる案件です。自分の分析や提言が、経営の意思決定に影響する仕事です。
- 評価されにくい経験:大規模なシステム導入や業務改革の進捗管理が中心の案件です。やっていることが管理と調整なので、長く続けても戦略ファームの面接で評価される経験になりにくいです。こうした案件だけを2年以上続けると、移れる先が限られてきます。
どんな案件に入っていても、「この案件の本質的な論点は何か」を自分の頭で考える癖をつけてください。与えられた作業をこなすだけの2年間と、毎回自分なりの仮説を持って仕事に向き合った2年間とでは、面接での受け答えがまったく違います。
転職する時期:若手なら早いほどよい
総合ファームに入って1〜2年の人が戦略ファームを目指すなら、早いほどよいです。この段階では、案件の経験よりも、地頭と将来性で判断されるからです。3年を超えると、総合ファームでの仕事の進め方が体に染みついてしまい、ケース面接の解き方にもそれが表れます。
移る時期には、大きく2つの型があります。
- 20代で、将来性を見込まれて移る。 入社後は幅広い戦略案件に入ります。経験よりも、学歴と考える力で勝負することになります。
- マネージャー以上で、専門性を買われて移る。 ITやデジタルなど、戦略ファームが強化したい領域の専門家として移ります。戦略ファームの中だけでは育てにくい人材として、外から積極的に採用されている領域です。
このほかに、段階を踏んで移る人もいます。今のファームから別の大手の総合ファームに移り、そこで経験を積んでから戦略ファームに入る形です。直接移ることもできますが、段階を踏むほうが確実な場合があります。
マネージャーまで上がった人は、急がなくてよい
総合ファームでマネージャーまで上がった人は、急いで動く必要はありません。なぜ戦略をやりたいのかがはっきりしていないなら、そのままシニアマネージャーまで上がることを勧めます。
シニアマネージャーになると、裁量が大きくなり、売上にも責任を持ち、パートナーと日常的にやり取りするようになります。見える景色が変わります。転職の場での評価も、もう一段上がります。戦略をやりたいという気持ちが本物かどうかも、上の立場で仕事をしてみると分かることがあります。
社内の戦略部門に異動する道もある
総合ファームの中に戦略部門がある場合は、転職をしなくても、社内の異動で移れることがあります。社内で人との関係をきちんと築いていれば、異動は珍しくありません。ただし、戦略部門が別の会社になっている場合は、異動では移れません。
最終的に戦略ファームを目指すのであれば、社内の戦略部門を経由するより、直接戦略ファームを受けるほうが合理的なこともあります。社内の戦略部門に移ってから戦略ファームに移る場合も、職位が下がることが多いからです。どちらがよいかは、今の職位と年齢によります。
職位(ランク)は一つ下がることが多いが、年収は下がらない
総合ファームの戦略部門から戦略ファームに移る場合は、即戦力として扱われます。ただし、職位は1つ、場合によっては2つ下がることが多いです。総合ファームでマネージャーだった人が、その下の職位で採用される、ということはよくあります。
それでも、年収が下がることは基本的にありません。職位が下がっても、戦略ファームの給与水準のほうが高いからです。
戦略の案件に慣れていれば、頭の使い方は戦略ファームの仕事とかなり近いです。移った後に早く成果を出せば、下がった職位を取り戻すのは難しくありません。まったくの未経験で戦略ファームに入る人より、出だしはかなり有利です。
戦略ファームに移った後は、仕事の進め方を学び直す
移った後のことも知っておいてください。総合ファームで実行の支援や進捗の管理を中心にやってきた人は、戦略ファームに入ると、仕事の進め方を学び直すことになります。
論点を整理し、選択肢を並べて比べるという進め方は、実行を支援する仕事とは考え方が違います。経験者として入っても、この部分は未経験に近い状態から身につける必要があります。慣れるまでに2年ほどかかる人もいますし、切り替えに苦労する人もいます。
一方で、ここを乗り越えると、戦略を作る仕事と実行を支える仕事の両方ができる人になります。これは、戦略ファームだけで育った人にはない強みです。
そもそも戦略コンサルに移るべきかどうか
戦略ファームに移る前に、なぜ移りたいのかを一度確かめてください。
「戦略」というものへの漠然とした憧れであれば、今のファームに残るのも良い選択です。総合ファームの案件でも、自分で頭を使えば、戦略的な仕事はできます。
一方で、頭の切れる人たちに厳しく鍛えられたい、自分の当たり前の基準を若いうちに大きく上げておきたい、という理由であれば、戦略ファームに移る意味は十分にあります。