戦略コンサルを調べていると、「Tier1」「Tier2」といった言葉を目にします。戦略ファームを格で分ける俗称で、MBBと呼ばれるマッキンゼー、BCG、ベインを最上位に置く見方が一般的です。

「Tierが下のファームに入ると、その後のキャリアで不利になりますか」という質問を、面談でよくいただきます。私たちのうち1人は戦略ファームの出身です。その経験から言うと、Tierで明確に差が出るのは3つだけです。給与、PEファンドへの転職、起業するときのブランドです。日々の仕事で身につくスキルは、Tierよりも別の要素で決まります。

戦略コンサルのTierで変わる3つのこと

1. 給与水準

給与は、Tierに比例して明確に違います。最上位のファームが頭ひとつ抜けて高く、それ以外の戦略ファームは、最上位と総合ファームの中間に各社が分布している印象です。

入社する人の学歴や、求められるアウトプットの質にも、Tierによる差はあります。同じ分析でも、ロジックをどこまで詰めるか、メッセージにどこまでこだわるか、という基準が違います。

2. PEファンドへの転職

転職先については、最上位以外の戦略ファームからでも、事業会社の経営企画、ベンチャーキャピタル、他のコンサルファームへは遜色なく移れます。

明確に差が出るのは、PEファンドへの転職です。投資規模の大きいファンドは、MBBの出身であることがほぼ必須です。MBB出身であれば、そうしたファンドを狙えますし、そこに届かなくても、それなりに良いファンドに入れます。

一方、それ以外の戦略ファームからPEファンドに移る場合は、中規模以下のファンドが現実的な選択肢になります。将来、大型のPEファンドを本気で目指すのであれば、どのファームに入るかは重要な判断になります。

なお、PEファンドは金融の仕事なので、コンサルよりも投資銀行のほうが親和性は高いです。大型のファンドを最優先に考えるなら、投資銀行も選択肢に入ります。

3. 起業・独立するときのブランド

起業を視野に入れるなら、最上位のファームの名前は強く働きます。創業者の経歴に書いたときの見え方が違い、初期の採用、会社の見せ方、資金調達の場面で役に立ちます。

独立して、個人でコンサルの仕事を請ける場合も同じです。出身ファームによって、仲介会社が提示できる単価が変わります。

逆に言えば、PEファンドにも起業にも関心がない人にとって、Tierの差が持つ意味は、主に給与の差だけです。

Tierで変わらないこと:身につくスキルの種類

戦略を名乗るファームであれば、身につくスキルの種類は基本的に同じです。論点を設定し、仮説を立てて検証し、示唆を出して資料にまとめる。この一連の型は、どのファームでも大きくは変わりません。

差が出るとすれば、深さと厳密さです。求められる基準が高い環境にいるほど、同じ期間でも身につくものは深くなります。

ただし、その基準を決めているのは、ファームの名前よりも、配属されるチームと一緒に働く先輩です。最上位のファームに入っても、力のないマネージャーの下で雑な案件をやれば成長は鈍ります。それ以外のファームでも、優秀な上司と濃い案件を経験すれば力はつきます。スキルが目的なら、ファーム選びより、入社後にどのチームでどの案件をやるかのほうが、変数として大きいと考えたほうが現実的です。

MBB以外の戦略ファームにも良さがある

最上位以外の戦略ファームには、そのファームならではの良さがあります。

  • 育成に手をかけてもらいやすい。 採用する人数が少ないファームは、一人ひとりの育成に時間をかけられます。入社後に成長する環境としては、むしろ有利な面があります。
  • 昇進が早ければ、給与の差は縮まる。 給与水準は最上位のファームのほうが高いですが、昇進が早ければ、同等かそれ以上になることもあります。
  • 自分に合う社風を選べる。 ファームにはそれぞれ色があり、合う合わないがあります。実際に社員と話して相性が良いと感じたなら、それは大事にしてよい判断材料です。

「Tierが下のファームなら入りやすい」と考えるのは誤りです。どの戦略ファームも採用人数が少なく、実力に加えて社風との相性も見られます。最上位のファームから内定をもらった人が、他の戦略ファームでは落ちる、という例は珍しくありません。

Tierにこだわって入社を見送るのは、もったいない

「第一志望の最上位ファームには届かなかったが、他の戦略ファームから内定をもらった。入社すべきか、1年後に再挑戦すべきか」という相談も受けます。私たちは、内定をもらったファームにそのまま入ることを勧めます。

理由は、一度戦略ファームに入ってしまえば、戦略ファームの間の転職は比較的容易だからです。戦略ファームで1〜2年働いてから、最上位のファームに移る人はたくさんいます。

採用する側の立場で考えると、分かりやすいです。まったくの未経験で戦略ファームに入った人は、半年から1年は戦力になりません。その立ち上がりの一番大変な時期を、すでに別の戦略ファームで乗り越えている人は、採用後すぐに案件に入れることが見込めます。だから、採用する側は大いに歓迎します。

戦略ファーム選びでTierをどう使うか

  • 大型のPEファンドや起業を目指す人は、Tierを重視する意味があります。最上位のファームを最終的な目標に置き、そこに至る道筋を考えます。
  • 事業会社の経営企画やスタートアップに進みたい人は、Tierの差を気にしすぎる必要はありません。入れるファームに入り、良い案件と上司のもとで力をつけるほうが大事です。
  • コンサルを長く続けたい人は、Tierよりも、自分のやりたい領域の案件があるか、働き方が合うかを優先します。